2017年06月30日
今週の注目疾患 平成29年・25週(6月19日~6月25日)
【百日咳】
百日咳は、Bordetella pertussis による長期間続く咳嗽や痙咳発作を特徴とする呼吸器感染症である。
その他、B. parapertussis や B. holmessi も百日咳様症状を引き起こす。
百日咳患者の中心は小児であるが、いずれの年齢でも罹患しうる。
移行抗体が期待できないため、1 歳未満の乳児(特に生後 6 か月未満の乳児)は重症化、時に死亡のリスクがある。
現在、百日咳は感染症法に基づく 5 類定点把握疾患(小児科定点)として分類され、臨床診断により、週単位で年齢別・性別の患者数を届出することとなっている。
百日咳ワクチンを含む混合ワクチン接種により、本邦における百日咳の患者は大きく減少したが、一方で成人の百日咳患者の報告や小・中学生世代において集団感染・流行事例の報告がある。
2013 年以降 2017 年第 25 週に、県内の小児科定点医療機関から報告された 499 例の百日咳についてまとめると、206 例(41%)は 20 歳以上の報告である。
また重症化のリスクのある 1 歳未満の患者は 43 例(9%)報告されている(図 1)。
年次別では、2015 年にやや報告が多いものの、定点当たり報告数が 1 を超えた週はなかった(図 2)。
百日咳のサーベイランスにおいては、定点把握疾患のため成人を含む百日咳患者の発生動向が正確に把握できていないこと(成人が乳児の感染源になりうる)、ワクチン接種歴が不明であること、集団感染の探知が困難であるといった課題がある。
加えて現在は届出に実験室内検査は必須でなく、報告の特異度に懸念があることも課題である。
また、感染症流行予測調査で報告された百日咳の抗体保有状況において、5、6 歳代の抗体保有率が低いという結果がある。
これらの背景を問題とし、6 月 19 日の第 21 回厚生科学審議会感染症部会では、百日咳を 5 類感染症の全数把握疾患とすることや届出基準の改正が検討された。
来年 1 月からの施行を予定するとされ、本年秋には改正案に係るパブリックコメントの実施も予定されている。百日咳対策を進める上で必要なサーベイランス体制について今後も検討していくことが望まれる。
【千葉県感染症情報センターより参照】
(平成29年6月28日更新)