2017年04月14日

今週の注目疾患   平成29年・14週(4月3日~4月9日)

~ロタウイルスによる感染性胃腸炎~
ロタウイルスは、乳幼児の急性胃腸炎の主要な原因ウイルスとして知られ、ロタウイルスによる感染性胃腸炎は、通常 12 月ないしは年明け頃から発生を認め始め、春先に発生のピークを示す。
ロタウイルスによる胃腸炎の主な症状は、水のような下痢、嘔吐、腹痛や発熱である。日本ではロタウイルス感染による死亡はまれであるが、それでも重度の脱水を引き起こし、入院を要することがあり、また胃腸炎以外の疾患として急性脳症や多臓器不全を引き起こすことがある。
ロタウイルスは環境中でも安定であり、また感染力が非常に強く、ウイルスの感染予防は極めて難しい。
糞口感染が主な感染経路であるため、おむつの適切処理、手洗い、汚染衣類の消毒など
が感染拡大防止の基本となる。ロタウイルスについては初感染時の症状が最も重症化しやすいことが知られており、現在は乳児を対象としたロタウイルスワクチンが任意で接種可能となっている。
県内基幹定点医療機関から報告されるロタウイルスによる感染性胃腸炎について、2017 年第14 週は定点当たり 1.33(人)であり、直近 5 週で最も多い(図)。2017 年第 1~14 週に基幹定点から報告された全 38 例の患者の年齢中央値は 2 歳(範囲:0~10 歳)であり、年齢群別では 1 歳が 10 例と最も多く、次いで 0 歳と 2 歳がそれぞれ 5 例であった。性別は男女それぞれ 19例であった。
参考・引用 国立感染症研究所 ロタウイルス感染性胃腸炎とは.
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~梅毒(先天梅毒)~
梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)による細菌感染症であり、梅毒患者の発生動向は2010 年以降増加傾向に転じ、2016 年には全国でおよそ 4,500 例が報告された。以降も報告の増加傾向は続き、2017 年は第 13 週時点で既に 1,000 例超が報告されている。なお、近年の千葉県における梅毒の動向については、2017 年第 12 週の週報に記載している。
梅毒に妊婦が罹患している場合、胎盤を通じて胎児にも感染することがあり、適切な治療がなされなければ流産や死産、先天梅毒を生じる原因となる。本邦において先天梅毒は、感染症法の5類感染症全数把握疾患の「梅毒」の病型〔早期顕症(I期、II 期)、晩期顕症、先天梅毒、無症候〕のひとつとして報告されており、近年の梅毒患者の増加に伴い先天梅毒の発生も危惧され、2015 年には全国で 13例の報告があった。先天梅毒では、生後間もなく皮膚病変、肝脾腫、骨軟骨炎などが認められるものを早期先天梅毒と称し、乳幼児期は症状を呈さず、学童期以降に Hutchinson3 徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson 歯)を呈するものを晩期先天梅毒という。先天梅毒は、妊娠中に早期診断・治療をすることで発生を防ぎうる疾患である。そのため、前期の妊婦健診において検査が行われているが、健診の未受診、適切な治療が行われていない、治療が不十分といった理由から先天梅毒が発生したことが報告されている。また前期の妊婦健診で陰性であっても、その後の妊娠中の感染と考えられる先天梅毒の症例も報告されている。先天梅毒の発生防止には、妊婦健診未受診や中断の予防、妊娠期間中の梅毒を含めた性感染症予防に関する啓発、必要に応じた後期健診における再検査やパートナーも含めた完治の確認、また、背景にある梅毒の増加傾向を止めることが重要である。
2012 以降、県内医療機関から報告のあった先天梅毒は 8 例であり、年次別では、2012 年 1 例、2013年 2 例、2014 年 3 例、2015 年 2 例となっている(図 1)。8 例中 7 例は 0 か月齢、残る 1 例は生後 3か月齢の症例であった。
(参考・引用) 国立感染症研究所. IASR. 本邦における先天梅毒発生予防に向けて-感染症発生動向調査 報 告 症 例 に お け る リ ス ク 因 子 の 検 討 - >>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(平成29年4月14日更新)