2017年06月23日

今週の注目疾患   平成29年・24週(6月12日~6月18日)

【劇症型溶血性レンサ球菌感染症】
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、主に A 群レンサ球菌の Streptococcus pyogenes によって引き起こされる敗血症性ショック病態である。
初期症状は四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下等であるが、あきらかな前駆症状がないこともある。
症状の進行が非常に急激で、発症すると急速に多臓器不全となり、死に至ることも多い。
S. pyogenes 以外にも B 群レンサ球菌の S. agalactiae や G 群(C 群、A 群である場合もある)の S. dysgalactiae subsp. equisimilisなどが起因菌になる。
感染症法において、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は 5 類全数報告対象疾患に分類され、「ショック症状」かつ「肝不全、腎不全、急性呼吸器窮迫症候群、DIC、軟部組織炎、全身性紅斑性発疹、中枢神経症状のうち 2 つ以上」を伴い、β溶血性レンサ球菌が血液、髄液などの通常無菌的な部位、もしくは生検組織、手術創、壊死軟部組織といった箇所から検出された症例について、届出対象となる。
2013~2017 年第 24 週までに、合計 67 例が県内の保健所に届け出られており、2017 年は9 例の届出がある。
発生に季節的な変動はみられないが、報告は増加傾向にある(図 1)。
性別については男性患者が 33 例(49%)と性別による届出の差はない。
分離株において A 群とされたのが 37 例(55%)、次いで G 群が 17 例(25%)、B 群が 8 例(12%)、残る 5 例は血清群別未実施であった。
患者の年齢中央値は 68.5 歳(範囲 0~94 歳)であり高齢者に多いが(図 2)、G 群による症例の年齢中央値(77 歳)の方が、A 群(66 歳)よりも高い。血清群の違いによる発症年齢の違いは、宿主因子(免疫状態など)や病原体因子(侵入門戸など)が複雑に影響していると考えられる。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、その原因となる菌種が複数あり、包括的な予防手段といったことは困難であるが、B 群レンサ球菌の垂直感染による新生児の侵襲性感染症の予防には、妊娠 35-37 週において母親の膣内・直腸内の保菌の有無を調べ、陽性時には分娩時に母親へ抗菌薬の投与が行われることもある。また、その他のレンサ球菌(例えば S. suis)による劇症型の侵襲性感染症についても起きうることに注意が必要である。


【千葉県感染症情報センターより参照】
(平成29年6月21日更新)