2017年06月19日

今週の注目疾患   平成29年・23週(6月5日~6月11日)

~レジオネラ症~
レジオネラ症は、感染症法における 4 類感染症に分類され、土壌や水などの自然環境中に存在 するレジオネラ属菌によって引き起こされる。エアロゾルを発生しうる人工環境(噴水・冷却塔・
ジャグジー・加湿器等)や循環水を利用した入浴設備等で、衛生的な維持管理がなされていない
場合、レジオネラ属菌が増殖し感染源となることがある。原因となるレジオネラ属菌は通常ヒト からヒトに直接感染することはない。 レジオネラ症は劇症型のレジオネラ肺炎と一過性のポンティアック熱の 2 つの病型に分類され る。レジオネラ肺炎の潜伏期間は通常 2-10 日(16 日間の症例報告もある)、中枢神経症状や下痢 などを認めることもあり、有効な抗菌薬による治療がなされないと特に致命的になる(免疫抑制 下では 40~80%が死亡)。一方ポンティアック熱は潜伏期間が数時間から 48 時間程度であり、インフルエンザ様症状が 2~5 日続くが、一過性で治癒する。 2013~2017 年第 23 週にレジオネラ症と診断され、県内の保健所に発生届のあったレジオネラ 症は合計 286 例となっており、年間 60~80 例程度の報告を認める。病型の内訳はレジオネラ肺 炎が 272 例、ポンティアック熱が 12 例、無症状病原体保有者が 2 例であった。2017 年は第 23 週までに 20 例のレジオネラ症の報告があるが、過去 4 年と同程度である(過去同時期(第 1~23 週):2016 年 19 例、2015 年 19 例、2014 年 23 例、2013 年 17 例)。レジオネラ症の報告は年間 を通して認めるが、夏に報告が多い年もある。報告例の多くは高齢者であり 286 例の年齢中 央値は 68 歳(四分位範囲 60-76 歳)、また男性の症例が 237 例(83%)となっている。症例の多 くが尿中抗原による診断であり、レジオネラ症の代表的な起因菌である Legionella pneumophila 血清型 1 に対する尿中抗原による診断は特異度が高く、迅速に結果が判明する点においても有用 である。ただし、症例によっては尿中抗原が長期に陽性となることもあり、治療効果の判定には向かず、また診断においても臨床症状や曝露歴と合わせて判断することが大切である。菌分離は、尿中抗原による診断が難しいレジオネラ属菌による症例の確認や、曝露源と推察される環境から分離された菌と合わせて遺伝子型別を行なうことによって、感染源の特定といった公衆衛生対応にも有用となる。前述の人工環境や入浴施設の利用による感染が疑われる場合には、環境検査やその曝露源周囲にポンティアック熱を含むレジオネラ症の症状を呈したものがいないか確認し、潜伏期間中は健康監視などのフォローアップが求められる。なにより、エアロゾルを発生しうる 人工環境や入浴施設については、平時からの適切な維持管理がレジオネラ症予防に重要である。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(平成29年6月14日更新)