2022年12月09日

2022年 第 48 週(2022/11/28~2022/12/4)

【今週の注目疾患】
■性感染症(Sexually Transmitted Disease(STD))
 2022 年第 48 週までに県内医療機関から報告のあった梅毒の年間累計報告数が 307 例となり、1999 年の現行感染症サーベイランス開始以降初めて、年間累計報告数が 300 を超えた。
新型コロナウイルス感染症の流行以降、報告数が大きく減少する疾患がある一方、梅毒は 2 年連続過去最多報告数を更新し、増加傾向が継続している。
男女とも増加傾向がみられるが、男性は 20~50 代と比較的幅広い年代に分布するのに対し、女性は 20 代に多い傾向があった。

 定点把握性感染症(STD 定点)の 4 疾患(性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症)についても、2013 年と比較して 2021 年、2022 年の報告数は増加の程度に差はあるが増加していた。
特に、2020 年以降、性器クラミジア感染症と淋菌感染症の男性の報告数増加が著しく、性器クラミジア感染症は 2013 年と比較して 2021年は 5 倍以上、淋菌感染症も 2 倍以上増加していた。
女性についても男性ほど急激な増加は認められていないものの 2013 年と比較して 2021 年は性器クラミジア感染症が 1.4 倍ほど、淋菌感染症が 2 倍以上に増加していた。
なお、淋菌感染症の女性の報告数が男性よりも少数であることについては、女性は自覚症状に乏しく受診機会が少ないことが要因の一つと考えられており、注意を要する 1)。

 2022 年 1 月から 11 月までの性器クラミジア感染症と淋菌感染症の年代別報告数は、女性については、20 代に多い傾向があった。
男性については、10~60 代と比較的幅広い年代に分布する傾向があるが、20 代が最も多かった。

■梅毒
 病原体は梅毒トレポネーマである。
成人では性行為・疑似性行為により感染することが多いが、感染した妊婦の胎盤を通じて胎児に感染する経路があり、先天梅毒の原因となる。
経時的に様々な臨床症状が出現するが、症状が軽快する時期があり、治療開始が遅れることに繋がる 2)。

■性器クラミジア感染症
 病原体はクラミジア・トラコマチスである。
成人では性行為・疑似性行為により感染するが、新生児は母親からの産道感染である。
男性では尿道炎が最も多い。
女性では子宮頸管炎などを起こすが自覚症状の乏しい場合が多い。
10 代の感染も見られることから、将来の不妊に繋がるとして憂慮される。
また、妊婦の感染は新生児のクラミジア産道感染の原因となり、新生児肺炎や結膜炎を起こす 3)。

■淋菌感染症
 病原体は淋菌である。
性行為・疑似性行為により感染する。
男性は主として淋菌性尿道炎を呈し、女性は子宮頸管炎を呈する。
男性でも症状が典型的でなく、場合によっては無症状に経過することも報告されている。
女性ではより症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、自覚症状に乏しいのが一般的である。
不妊症の原因になり得る 1)。

■予防
 感染が疑われる場合には性行為等を避け、パートナーとともに医療機関を受診し、早期に治療を開始することが重要である。
また、予防には性的接触時のコンドームの適正使用がある 4)。
県の無料・匿名性感染症検査情報
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■参考
1) 国立感染症研究所:淋菌感染症とは
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:梅毒とは
>>詳細はこちら
3) 国立感染症研究所:性器クラミジア感染症とは
>>詳細はこちら
4)千葉県:主な性感染症(クラミジア・淋菌等)について
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年12月7日更新)