2021年 第 36 週  ~カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症~

今週の注目疾患   2021年 36週(2021/9/6~2021/9/12)
【今週の注目疾患】

【カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症】
 2021 年第 36 週に県内の医療機関からカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症(以下、CRE感染症)が 2 例報告された。
1 例は高齢者施設に入居中の 70 代女性で、症状は尿路感染症であり、尿検体から、K. pneumoniae が検出された。もう 1 例は 50 代女性で、症状は尿路感染症であり、尿検体から、K. aerogenes が検出された。
いずれも症例の集積は認められていない。

 CRE感染症の 2021 年累計は 35 例となった。
2019 年、2020 年とほぼ同程度の報告数で推移している。
性別では男性 22 例(63%)、女性 13 例(37%)で、年齢別では 65 歳以上の患者の割合が 27 例と全体の 77%を占めていた。
菌種別では、K. aerogenes が 13 例(37%)と最も多く、次いで E. cloacae が 11 例(31%)、K. pneumoniae が 5 例(14%)であった。
また、本年CRE感染症の検体で病原体サーベイランスに登録された 12 検体についてこれまでのところカルバペネマーゼ遺伝子(耐性遺伝子)を有する検体は確認されていない。

 CRE感染症は、グラム陰性菌感染症の治療において最も重要な抗菌薬であるメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬および広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す腸内細菌科細菌による感染症の総称である。
CREは主に感染防御機能の低下した患者や術後患者などに、肺炎や尿路感染症などの多様な感染症を起こす。
無症状で保菌されることも多いが、感染症発生動向調査の届出対象は発症者のみである)。

 2020 年 2 月以降、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、県内では様々な感染症の発生減少が認められるが、CRE感染症患者は新型コロナウイルス感染症発生前の 2019 年と比較して減少がみられていない。
地域包括ケアシステムの構築により、高齢者が、急性期病院と高齢者施設、急性期病院と療養型病院など、複数の施設を行き来する機会が増えており、薬剤耐性菌が複数の医療機関や医療機関以外の場にも拡がる可能性がある。
新型コロナウイルス感染症の流行下においても、各機関での薬剤耐性菌に対する感染対策も着実に実施し、地域全体へ拡げない意識が重要となる。

 厚生労働省は、CRE感染症患者の発生届出が医療機関からあった際に、当該患者の検体の提出を求め、地方衛生研究所等で試験検査を実施すること、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、薬剤耐性アシネトバクター感染症についても同様の対応に努めることとしている)。
また、これらの感染症は保菌者も含め 1 例目の発見をもってアウトブレイクに準じた厳重な感染対策を実施するよう求めている)。

 各機関における感染拡大防止には、手指衛生、適切な個人防護具着脱等の標準予防策、接触予防策の徹底、発生探知時の隔離、周辺の接触者や環境等へのスクリーニング検査の実施が重要となる。
ただし、生活の場である高齢者施設は医療機関とは異なり、日常的に細菌培養検査を実施している施設は少なく、保菌者や感染者の把握が不十分であり、潜在的保菌者や感染者に感染防止策が行われないことによる薬剤耐性菌拡大のリスクが示唆されている)。
このような施設への啓蒙及び支援のほか、転退院時の適切な情報提供も地域における拡散防止に重要である。

■参考
1)国立感染症研究所疫学センター:カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症
>>詳細はこちら
2)カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染 症等に係る試験検査の実施について
(厚生労働省通知平成 29 年 3 月 28 日健感発 0328 第 4 号)
3)医療機関における院内感染対策について
(厚生労働省通知平成 26 年 12 月 19 日医政地発 1219 第 1 号)
4)高齢者施設におけるAMR対策に関する研究―有料老人ホームと介護保険施設における「拡げない対策」の実態調査―(環境感染誌 Vol.36 no.1,2021)
>>詳細はこちら


【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年9月15日更新)

戻る
メニュー
HOME 予定 知識 HELP