2022年07月15日

2022年 第 27 週(2022/7/4~2022/7/10)

【今週の注目疾患】
■手足口病
 2022 年第 27 週に県内定点医療機関から報告された手足口病の定点当たり報告数は、20 週から8 週連続で増加し、5.06(人)であった。
警報開始の基準値である 5.0(人)をこえており、大きな流行が発生または継続しつつある。
 第 27 週に報告された患者の年齢別では 1 歳が 40%と最も多く、次いで 2 歳 31%、3 歳 14%であった。
発生報告が多かった地域は、海匝 17.67(人)、柏市 9.89(人)、印旛 9.06(人)保健所管内であった。
6保健所管内(海匝、柏市、印旛、船橋市、習志野、松戸)で 5.0(人)をこえる大きな流行が発生しており、感染予防に十分留意する必要がある。

 手足口病は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症である。
コクサッキーA16(CA16)、コクサッキーA6(CA6)、エンテロウイルス 71(EV71)などのウイルスが原因ウイルスとなる。
基本的に予後良好な疾患であるが、急性髄膜炎の合併が時に見られ、稀ではあるが急性脳炎を生ずることもある 1)。

感染経路は主に飛沫感染で起こるが、便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などがあり得る。
便中へのウイルスの排泄は長期間にわたり、症状が消失した患者も 2~4週間にわたり感染源になり得る。
予防としては、接触感染、飛沫感染への対策が中心となる。
手洗いの励行は重要であり、特に排便後・排泄物の処理後の流水と石けんによる手洗いを徹底する1)。
保育施設などの乳幼児の集団生活では、感染を広げないために、職員と子どもたちがしっかりと手洗いをすること、タオルなどの共用はしないことが重要である 2)。

■RS ウイルス感染症
 2022 年 27 週に県内の定点医療機関から報告された RS ウイルス感染症の定点当たりの報告数は、前週の 0.54(人)からほぼ倍増し、1.05(人)となった。
夷隅、安房保健所管内を除く県内14 保健所管内から患者の発生報告があり、全県的に発生が見られている。
特に報告数が多かった地域は、千葉市 2.17(人)、市原 2.00(人)、習志野 1.56(人)保健所管内であった。
 2022 年に報告のあった症例のうち、年齢群別では 2 歳が 30%で最も多く、次いで 1 歳が 29%、0 歳が 18%、3 歳が 14%であった。2018~2019 年は 1 歳以下が 70%以上を占めていたが、2020年は 68%、2021 年は 48%、2022 年は 47%であった。
一方、2~5 歳の割合は 2018~2019 年は 25%以下であったが、2020 年は 32%、2021 年は 50%、2022 年は 51%であった。

 RS ウイルス感染症は RS ウイルスを病原体とする呼吸器感染症である。
RS ウイルスは世界中に広く分布しており、ほぼすべての人は幼児期に感染する。
症状は軽症の感冒様症状から下気道感染に至るまで様々で、特に生後 6 ヶ月未満で感染すると重症化するといわれる。
また、RS ウイルスは成人も再感染することがある。
慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者にも重症化のリスクがあると報告されており、高齢者施設などでの集団感染には注意が必要である 3)。
 感染経路としては、RS ウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、又は会話をした際に飛び散るしぶきを浴びて吸い込む飛沫感染や感染している人との直接の濃厚接触、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、机、いす、おもちゃ、コップ等)を触ったりなめたりすることによる間接的な接触感染で感染する。
成人の再感染では、感冒様症状又は気管支炎症状のみである場合も多く、RS ウイルス感染症であると気づかれていない年長児や成人が存在する。
従って、咳等の呼吸器症状がある年長児や成人は可能な限り、乳幼児との接触を避けることが重要である。
また、乳幼児と日常的に接触する場合、特に咳等の呼吸器症状がある場合には、マスクをして接することが重要である。
接触感染対策としては、流水・石けんによる手洗いやアルコール製剤による手指衛生の励行のほか、ウイルスが付着している可能性が高い高頻度接触物(子どもたちが日常的に触れるおもちゃ等の共用物品、ドアノブ等)のアルコールによる消毒等の実施が重要である 4)。

■参考
1)国立感染症研究所:手足口病とは
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2)厚生労働省:手足口病に関する Q&A
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所:IASR Vol. 43 RS ウイルス感染症 2018~2021
>>詳細はこちら
4)厚生労働省:RS ウイルス感染症 Q&A
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年7月13日更新)