2023年03月10日

2023年 第9週
(令和5年2月27日~令和5年3月5日)

【今週の注目疾患】
■侵襲性肺炎球菌感染症
 2023 年第 9 週に県内医療機関から侵襲性肺炎球菌感染症(Invasive pneumococcal disease,IPD)の届出が 2 例あり、2023 年の累計は 13例となった。
13 例のうち、性別では、男性が 10 例(77%)、女性が 3 例(23%)であった。年代別では、65 歳以上が 9 例(69%)と大部分を占め、次いで 5-64歳が 3 例(23%)、0-4 歳が 1 例(8%)であった。ワクチン接種歴については、0-4 歳の 1 例については、沈降 13 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の計 4 回の接種歴があったが、その他は接種歴不明が 7 例(54%)、接種歴無しが 5 例(38%)であった。

 2013 年から 2023 年第 9 週までに県内医療機関から IPD の届出が 1003 例あった。
2018 年の年間累計報告数 165 例をピークにその後は減少傾向が続いており、特に新型コロナウイルス感染症の流行が始まった 2020 年以降は2019 年の年間累計報告数の半数以下となっている。
年代別では、65 歳以上が 565 例(56%)で半数以上を占めていた。

 肺炎球菌は主に呼吸器感染症を引き起こすグラム陽性球菌である。
現在までに少なくとも 100種の血清型が知られている。
肺炎球菌は乳幼児の鼻咽頭において高頻度に検出され、小児や成人に中耳炎、副鼻腔炎や菌血症をともなわない肺炎などの非侵襲性感染症を引き起こす。
また、本菌はときに髄膜炎や菌血症をともなう肺炎などの IPD を引き起こす。
IPD とは通常無菌的であるべき検体から肺炎球菌が分離された疾患を指し、2013 年 4 月から感染症法の 5 類感染症に追加され、全数届出の対象となった 1)。

 我が国において、5 歳未満の小児の肺炎球菌ワクチンとしては、沈降 7 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)が 2009 年 9 月に承認され、2013年 4 月から定期接種対象ワクチンとなり、11 月には PCV13 に置き換わった。
一方、成人の肺炎球菌ワクチンとしては、23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)が 1988 年 3 月、PCV13 は 2014 年 6月、沈降 15 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)が 2022 年 9 月に承認された 1)。
PPSV23 は、2023 年度までは、該当する年度に 65 歳、70 歳、75 歳、80 歳、85 歳、90 歳、95 歳、100 歳となる者と、60 歳から 65歳未満の者で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある者が定期接種の対象となる 2)。

 PCV はワクチンに含まれない血清型(non-vaccine serotypes:nVT)の肺炎球菌感染症に対しては予防効果を示さないため、nVT 肺炎球菌による感染症の増加が血清型置換として世界的に問題視されている。
今後の報告数の増加には注意が必要である。

■参考
1)国立感染症研究所:IASR 肺炎球菌感染症 2022 年現在(IASR Vol. 44)
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2)厚生労働省:肺炎球菌感染症(高齢者)
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■インフルエンザ
 2023 年第 9 週の県全体のインフルエンザ定点当たり報告数は 8.48(人)となった。
前週(2023年第 8 週)8.95(人)から減少したが、保健所管内別では船橋市 22.06(人)、習志野 13.07(人)、君津 12.69(人)、松戸11.61(人)で定点当たり報告数 10.0(人)を超えていた。
引き続き、インフルエンザの予防対策を徹底していただきたい。

千葉県:インフルエンザから身を守ろう
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年3月8日更新)