2017年11月02日

今週の注目疾患   平成29年・43週(10月23日~10月29日)

【レジオネラ症】
2017 年第 43 週に県内医療機関から 5 例のレジオネラ症の届出を認め、2017 年の累計は 55例となった。
55 例の届出の内訳は、肺炎型 53 例、ポンティアック熱型 1 例、無症状病原体保有者が 1 例である。
本症の診断契機を考慮すると、ポンティアック熱や無症状病原体保有者は、集団感染といった事例等でなければ、多くが探知は困難とも考えられる。
本年の届出例 55 例のうち、43 例(78%)は男性であり、その年齢中央値は 66 歳(範囲 37~87 歳)と中高年の男性に多い傾向は以前と変わっていない(女性の年齢中央値は 74.5 歳(範囲 49~95 歳))。レジオネラ症は通年発生しうるが、冬季に少なく夏季に多い傾向が若干みられる(図)。
2013 年以降、年間 60~80 例程度の届出を認めており、2017 年も例年と同程度の届出数となる可能性が高い。
本症の原因となるレジオネラ属菌は、土壌や水などの自然環境中に存在し、人工環境(噴水・冷却塔・ジャグジー・加湿器等)や循環水を利用した入浴設備等で、衛生的な維持管理がなされていない場合、菌が増殖し感染源となる。
臨床症状では他の細菌性肺炎との区別は困難であるが、本症の特徴として中枢神経系の症状や下痢がみられることが言われている。
代表的な原因レジオネラ属菌は Legionella pneumophila であり、特に主要な L. pneumophila 血清群 1 に対しては、尿中抗原の検査キットが迅速かつ簡便であり、広く普及している。
2017 年に届け出られた 55 例においても、1 例を除き尿中抗原検出法が実施されていた。
ただし、尿中抗原検出法は原則的に L. pneumophila 血清群 1の抗原を検出する系であり、他の血清群や他種のレジオネラ属菌を起因菌としたレジオネラ症の診断を目的としていないことに留意が必要である。
L. pneumophila 血清群 1 以外によるレジオネラ症が実際にどの程度発生しているかについて、患者喀痰の培養を実施した過去の報告では、20~40%程度が L. pneumophila 血清群 1 以外のレジオネラ属菌の分離を認めている。
LAMP 法のように喀痰中の菌の遺伝子を検出する迅速診断は、L. pneumophila 血清群 1 以外のレジオネラ属菌も検出可能であり、菌分離による方法も尿中抗原による診断が難しいレジオネラ属菌による症例の確認や、曝露源と推察される環境から分離された菌と合わせて遺伝子型別を行なうことによる感染源の特定といった公衆衛生対応に有用となる。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(平成29年11月1日更新)