2017年08月04日

今週の注目疾患   平成29年・30週(7月24日~7月30日)

【腸管出血性大腸菌感染症】
腸管出血性大腸菌感染症は、ベロ毒素(Vero Toxin, VT)を産生する、または VT 遺伝子を保有する大腸菌を原因とする。
症状は幅広く、感染しても無症状の場合もあれば、一方で溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome, HUS)を続発して死亡あるいは腎機能障害などの後遺症を残すなど様々な病態をとりうる。
典型例では 3~5 日の潜伏期をおいて、激しい腹痛をともなう頻回の水様便の後に血便がでる。また 37~38℃台の熱や嘔吐を伴うこともある。
感染し発症に必要な菌数はわずか 50 個程度と考えられており、少数の菌数で感染が成立するため、汚染食品からの感染に加えて糞口感染によるヒトからヒトへの二次感染にも注意が必要である。
千葉県では 2017 年第 30 週に 7 例が届出られ、2017 年 1~30 週の累計は 50 例(患者 35 例、無症状病原体保有者 15 例)となり、昨年同時期(49 例)と同程度の報告状況となっている(図1)。
患者のうち、届出時の情報で HUS の記載のある症例はなかった。
分離株の O 血清群別ベロ毒素型別では、O157(VT1VT2)7 例、O157(VT2)4 例、O157(VT 型不明)4 例、O26(VT1)22 例、O26(VT 型不明)1 例、O103(VT1)5 例、O121 (VT2)1 例、O 血清型不明(VT1)4 例、O 血清型不明(VT 型不明)2 例であった。
2017 年はこれまで O26 株による報告が多いが、28 週以降は O157 株による症例の届出が多くなっている(図 2)。
O157 株の多くは VT2 産生株(VT1VT2 もしくは VT2)であり、O26(VT1)のように VT1 単独産生株と比較し、患者(有症者)として届出られる割合や血便を呈する患者の割合も高く(表 1)、注意が必要である。
腸管出血性大腸菌感染症の予防には、平時から手洗いの励行といった感染予防策の徹底、子供や高齢者の健康状態に注意を払うこと、また食中毒予防のため肉類は十分に加熱し摂取することや調理時の交差汚染に注意することが大切である。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(平成29年8月2日更新)