2017年08月10日

今週の注目疾患   平成29年・31週(7月31日~8月6日)

【RS ウイルス感染症】
RS ウイルス感染症は乳幼児に多く認める急性呼吸器感染症であり、感染症法に基づく 5 類定点(小児科定点)把握疾患に分類されている。
生後 1 歳までに半数以上が、2 歳までにはほぼ 100%の人が RS ウイルスの初感染を受けるとされている。
感染経路は飛沫や接触感染であり、2~8 日(典型的には 4~6 日)の潜伏期間を経て発症し、症状は軽い風邪様症状から重症の肺炎までと幅広いが、特に乳児期早期(生後数週間~数カ月間)に初感染した場合は、細気管支炎や肺炎といった症状を引き起こし重症化することがある。
また心肺系の基礎疾患や免疫不全を有する小児や、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者においても、重症化のリスクがあり注意が必要である。
年長の児や成人においても再感染による顕性感染を認めるが重症となることは少ない。
千葉県内の RS ウイルス感染症は、2013 年から 2015 年は夏から年末の冬にかけて徐々に報告数が増加していくといった傾向にあったが、2016 年は 8 月下旬ごろから報告が急増し、9 月下旬(第 39 週)にピークを認めた。
2017 年は第 31 週に定点当たり報告数が 1.22 人となり、2016 年よりも1カ月程度早く報告の急増がみられている(図 1)。
早期の RS ウイルスの流行が危惧され、今後の動向に注意が必要である。
予防には適切な飛沫感染や接触感染に対する感染予防策を講じることが必要である。
飛沫感染対策としてのマスク着用(ただし、RS ウイルスは目の粘膜からも感染しうる)や咳エチケットは重要である。
なによりも手洗いといった基本的な手指衛生を徹底することが重要である。
なお、RS ウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制のため、表 1 に記載する新生児、乳児および幼児は遺伝子組み換え技術を用いて作成されたモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブ(Palivizumab)の投与が保険適用となっている。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(平成29年8月9日更新)