2021年08月20日

今週の注目疾患   2021年 32週(2021/8/9~2021/8/15)
【今週の注目疾患】

【レジオネラ症】
 2021 年 32 週に習志野保健所管内、市原保健所管内の医療機関からそれぞれ 1 例ずつのレジオネラ症が報告された。
性別では男性が 1 例、女性が 1 例であり、いずれも 70 代で肺炎型であった。
現時点において散発的な事例と思われ、同一施設などから症例の集積は認められていない。
 本年の累計報告数は 41 例となり、病型別では肺炎型が 39 例(95%)、ポンティアック熱型が 2 例(5%)であった。
性別では男性が 30 例(73%)、女性が 11 例(27%)と男性が多い。
年代別では、80 代が 12 例(29.3%)と最も多く、60 代 10 例(24.4%)、70 代 9 例(22.0%)と 60 代以上が多い。
レジオネラ症は一年を通して発生が見られるが、夏~秋により届出が多くなる傾向が認められていることから、今後も当該感染症の発生動向を注視していく必要がある。
 レジオネラ症は、土壌や水などの自然環境中に存在するレジオネラ属菌によって引き起こされる。
エアロゾルを発生しうる人工環境(噴水・冷却塔・ジャグジー・加湿器等)や循環水を利用した入浴設備等で、衛生的な維持管理が不十分な場合、レジオネラ属菌が増殖し感染源となることがある。
 また、がれき除去等の作業時に粉塵やエアロゾルを吸い込み、罹患するおそれがあるため、国立感染症研究所は今夏の水害時に注意すべき感染症として、レジオネラ症の発生リスクを中程度と評価し、注意喚起を行っている1)。
千葉県内においても、台風 10 号の影響で先週から大雨が続いており、地域によっては土砂災害や浸水の被害が発生している。
台風や大雨による水害発生時、がれきや汚泥の除去作業にあたる場合には、マスク等を着用し、肌の露出や素手の作業を回避して予防する必要がある。
 レジオネラ症は劇症型のレジオネラ肺炎と一過性のポンティアック熱の 2 つの病型に分類される。
レジオネラ肺炎の潜伏期間は通常 2~10 日(16 日間の症例報告もある)、中枢神経症状や下痢などを認めることもあり、有効な抗菌薬による治療がなされないと特に致命的になる。
過去には、県内でも死亡事例が報告されている(2018 年 3 例、2019 年 1 例、2020 年 2 例)。
一方ポンティアック熱は潜伏期間が数時間から 48 時間程度であり、インフルエンザ様症状が 2~5 日続くが、一過性で治癒する。
 患者からの菌分離は、尿中抗原による診断が難しいレジオネラ属菌による症例の確認や、曝露源と推察される環境から分離された菌と合わせて遺伝子型別を行なうことによって、感染源の特定といった公衆衛生対応にも有用となる。
原因となるレジオネラ属菌は通常ヒトからヒトに直接感染することはないが、患者周囲に同じ感染源に曝露した者がいる可能性があり、注意が必要である。
前述の人工環境や入浴施設の利用による感染が疑われる場合には、環境検査やその曝露源周囲にポンティアック熱を含むレジオネラ症の症状を呈したものがいないか確認し、エアロゾルを発生しうる人工環境や入浴施設については、平時からの適切な維持管理がレジオネラ症予防に重要である。

■引用・参考
1)国立感染症研究所:災害と感染症ポータル 令和3年夏季の水害(2021 年 7 月~)
>>詳細はこちら
国立感染症研究所:レジオネラ症とは
>>詳細はこちら
2021 年 22 週週報
>>詳細はこちら
県疾病対策課:浸水した家屋等の消毒方法について
>>詳細はこちら


【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年8月18日更新)