2023年04月28日

2023年 第16週
(令和5年4月17日~令和5年4月23日)

【今週の注目疾患】
■E型肝炎
 2023 年第 16 週に県内医療機関から E 型肝炎の届出が 2 例あり、2023 年の累計届出数は 15 例となった。
15 例のうち、性別では男性が 12 例/15 例(80%)、女性が 3 例/15 例(20%)で男性が多かった。
年齢中央値は 58 歳(範囲:34 歳-76 歳)で、年代別では、60 代が 5 例/15 例(33%)で最も多く、次いで 40 代と 70代がそれぞれ 3 例/15 例(20%)ずつであった。
症状の有無別では無症状病原体保有者が 8 例/15 例(53%)、患者(有症状者)が 7 例/15 例(47%)であり、無症状病原体保有者の方が多かった。
推定される感染原因・感染経路の記載があった症例は 6 例/15 例(40%)で、うち 5 例で肉類(豚肉、豚レバー、馬刺し、生レバー、もつ焼き)の喫食があったとされていた。
 2014 年から 2023 年第 16 週までの期間においては、県内医療機関から合計 254 例のE 型肝炎の届出があった。
近年、県内における E 型肝炎の届出数は増加傾向がみられ、昨年 2022 年には 2003 年の現行感染症サーベイランス開始以降最多となる 44 例の届出があった。
本年も第 16 週時点において、2022 年に次いで 2 番目に多い届出数(第 16 週時点で 15 例)となっている。
2020 年以降、無症状病原体保有者の数が年々増加しており、2020 年には 3 例のみであったが、2021 年は 11 例、2022年には 20 例となり、本年では前述のとおり無症状病原体保有者の数が患者(有症状者)の数を上回っている。

 E 型肝炎は、ヘペウイルス科(Hepeviridae)の E 型肝炎ウイルス(hepatitis E virus:HEV)の感染によって引き起こされる急性肝炎である。
潜伏期間は 15~60 日と長い。
発熱、全身倦怠感、悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛等の症状を伴い、黄疸が認められるが、不顕性感染も多い。
従来は慢性化しないと考えられていたが、臓器移植患者など免疫抑制状態にある患者の HEV 感染が慢性的な感染を引き起こすことがある 1)。
また妊婦が HEV に感染して発症した場合には、劇症化する率が高いと言われている 2)。

 HEV の感染経路は経口感染であり、ウイルスに汚染された食物、水の摂取により感染することが多い。
本邦では汚染された食品や動物の臓器や肉の生食による経口感染が指摘されている 2)。

 感染予防としては現時点において国内で認可されているワクチンはないため、手洗いの励行や飲食物の十分な加熱が重要となる。
HEV は室温では 28 日間生存可能であるが、80℃で 2 分間以上の加熱をすることで失活させることが可能である。
そのためブタやイノシシなどの生レバーやジビエなどの野生動物の火の通っていない肉等の生食を避ける必要がある3)。
また、E 型肝炎流行地域へ旅行する際は、清潔の保証がない飲料水(氷入り清涼飲料を含む)、貝類、果物、野菜をとらないように心がけることも有効な対策の一つである 2)。

■参考
1)国立感染症研究所:IASR Vol.42 p271-272:2021 年 12 月号
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2)厚生労働省:E 型肝炎ウイルスの感染事例・E 型肝炎Q&A
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3)一般社団法人日本感染症学会:E 型肝炎(Hepatitis E)
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年4月26日更新)