2021年04月30日
今週の注目疾患 2021年 16週(2021/4/19~2021/4/25)
【今週の注目疾患】
【腸管出血性大腸菌感染症】
腸管出血性大腸菌感染症は 2021 年第 15 週から今週にかけて県内医療機関から 7 例届出があり、2021 年の累計は 20 例となった。
性別は男性 8 例/20 例(40%)、女性 12 例/20 例(60%)と女性が多く、年代別では 30 代以下が 15 例/20 例(75%)と大部分を占めていた。
発生地域別では千葉市保健所管内が 7 例/20 例(35%)と最も多く、次いで海匝保健所管内で 4 例/20 例(20%)の症例が確認された。O 抗原と毒素型別では、前週と今週において O157 の VT1VT2 がそれぞれ 2 例ずつ確認されており、他の種別と比べて多く報告されていた。
腸管出血性大腸菌が産生するベロ毒素(VT)は、その種類の違いによって重症度に違いが見られ、VT2産生株(VT1VT2 もしくは VT2 単独)は VT1 単独産生株と比較して、有症状者の割合や血便を呈する患者の割合が高い傾向が見られる。
国の報告によると、溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併した症例 79 例のうち EHEC が分離された 50 例中 47 例(94%)の毒素型が VT2 産生株(VT1VT2 もしくは VT2 単独)であった 1)。
腸管出血性大腸菌はわずか 100 個程度の少量の菌数でも感染が成立するため、食品の調理時における野菜類の十分な洗浄、肉類の十分な加熱や生肉の喫食の回避、調理器具類の洗浄、消毒等、交差汚染を防止するための基本的な衛生対策を行うこと及び患者が発生した際は、家庭内や施設内等における二次感染を防ぐため、手洗いを励行することが感染予防のうえで重要となる。
また、近年の食品のデリバリーサービス利用者の増加や広域流通化に伴い、複数の地域にまたがり原因食品が喫食される可能性が上昇しており、広域食中毒事案も増加傾向にある 2)。
原因食品が地元や近隣地域以外からもたらされる可能性も否定できないため、日頃より患者への聴き取りや他地域での食中毒等関連情報にも気を配ることが必要である。
≪引用・参考≫
1)腸管出血性大腸菌感染症 2016 年 4 月現在(国立感染症研究所)
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2)最近の多様な食中毒の対応について(厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課_平成30年感染症危機管理研修会資料)
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年4月28日更新)