2022年11月11日

2022年 第 44 週(2022/10/31~2022/11/6)

【今週の注目疾患】
■デング熱
 2022 年第 44 週に県内医療機関よりデング熱が 1 例報告され、2022 年の累計報告数は 7 例となった。
7 例全てに海外渡航歴があった。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、国内外への人の移動が制限された 2020年 4 月を境に、デング熱の県内報告数は減少していたが、2022年 9 月から再び報告数の増加が見られている。
制限緩和等により、国内外への往来が活発化することが予想され、輸入デング熱症例の増加が懸念される。

 2018 年から 2022 年第 44 週までに県内では 55 例のデング熱の報告があった。
性別は男性 36例(65%)、女性 19 例(35%)であり男性が多かった。
年代別では 30 代が 13 例(24%)と最も多く、次いで 20 代が 12 例(22%)であった。
推定される感染地域は全て国外であり、8 割以上が東南アジア地域、南アジア地域であった。
55 例のうち血清型の記載があったものは 18 例あり、2 型 9 例(9/18,50%)、1 型 5 例(5/18,28%)、3 型 4 例(4/18,22%)であった。

 日本の輸入デング熱症例の動向は、最近増加傾向にある。
特に 2022 年 7 月から 9 月は、毎月10 例以上の報告があった。
2021 年 10 月から 2022 年 9 月における推定感染地域として多い上位4 か国はベトナム、フィリピン、ネパール、インドネシアであった 1)。

 2022 年は東南アジア地域など世界各地でデング熱の大規模な流行が報告されている。
ベトナムでは 2022 年第 43 週にデング熱が 9,441 例報告された。
2022 年第 43 週までの累積報告数は281,189 例となり、2021 年同週時点の累積報告数 58,177 例の 4.8 倍となった。
フィリピンでは2022 年 1 月 1 日から 10 月 15 日までの報告数が 181,971 例となり、2021 年同日時点の報告数62,611 例の 2.9 倍となった 2)。

 デング熱はデングウイルスの感染によって生じる感染症である。
デングウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるウイルスであり、1~4 型の 4 つの血清型からなる。
主な媒介蚊はネッタイシマカおよびヒトスジシマカであり、ヒト→カ→ヒトの感染環により自然界に存在している。
現在、ネッタイシマカは日本国内には分布してないが、ヒトスジシマカは北海道を除く広範な地域に分布している 3)。

 デングウイルスに感染した場合、約 50~80%の割合で不顕性感染に終わると考えられている。
感染して 3~7 日後に突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともある。
発症後、3~4 日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢・顔面へひろがる。
これらの症状は 1 週間程度で消失し、通常後遺症なく回復する 4)。
 デングウイルス感染後、デング熱とほぼ同様に発症し経過した患者の一部において突然、血漿漏出と出血傾向を主症状とするデング出血熱となる。
重篤な症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけたときに起こることが特徴的である。
患者は不安・興奮状態となり、発汗がみられ、四肢は冷たくなる。
極めて高率に胸水や腹水がみられる。
また、肝臓の腫脹、補体の活性化、血小板減少、血液凝固時間延長がみられる 4)。
現時点でデング熱に対する特異的な治療法はなく、また国内で承認されている利用可能なワクチンはない 3)。

 デング熱は蚊を介して感染する。
発症した人が蚊に刺されると、その蚊にウイルスが移り、その蚊に刺された他の人に感染する。
そのため、デング熱の予防には蚊に刺されないようにすることが重要である。
肌を露出しない長袖、長ズボンを着用する、素足でのサンダル履きを避ける、白など薄い色のシャツやズボンを選ぶ、虫よけスプレーや蚊取り線香を使用する、などの対策がある。
また、国外からの帰国時に発熱など心配な症状がある場合や体調に不安がある場合には、空港や港の検疫所に相談する。
デング熱の潜伏期間は 2~14 日間である。
帰国後に症状がでた場合には、速やかに近くの医療機関を受診し、渡航先や渡航期間、渡航先での活動を伝えることが重要である 5)。

■参考
1) 国立感染症研究所:日本の輸入デング熱症例の動向について(2022 年 10 月 17 日更新版)
>>詳細はこちら
2) WHO 西太平洋地域事務局:Dengue Situation Update 658 03 November 2022
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所: IASR Vol. 41 デング熱・デング出血熱
>>詳細はこちら
4)国立感染症研究所:デング熱とは
>>詳細はこちら
5)厚生労働省:デング熱について
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年11月9日更新)